(2023.08.27.改訂)
世界最強を明け渡した日本のパスポート
英国ヘンリー&パートナーズ(H&P)社が2023年7月に発表した最新の世界のパスポートランキングで、日本のパスポートは5年連続で維持していた首位の座を明渡し、3位に後退しました。
同ランキングはビザを取得せずに外国への渡航が可能な国の数を指標として順位化したもので、最新の順位は以下のようになっています。
・1位 シンガポール(192ヶ国)
・2位 ドイツ・イタリア・スペイン(190か国)
・3位 日本、オーストリア、フィンランド、フランス、ルクセンブルク、韓国、スウェーデン (189か国)
日本は新型コロナ対策の入国制限の緩和が遅かったことなどがビザ無し渡航可能国数に影響を与えていますが、以前として世界最強クラスの強いパスポートという地位を保持しています。
日本のパスポート
パスポート(旅券)は、国籍のある国の政府が発行し、国外渡航時に国籍や身分を証明する証明書(実際には冊子)です。
これに対してビザ(査証)は、渡航先の国が入国を許可するために発行する入国許可証です。
ビザについては特定の国のパスポートを保有している人については免除されることもあります。
冒頭の話の通り、日本のパスポートはビザなしで入国できる国や地域が極めて多く、189の国や地域に観光目的であればビザ無し入国できます。
日本のパスポートが「世界最強」などといわれる所以です。
2020年にパスポートが変わりました
日本のパスポート(旅券)は2020年2月から内部のデザインが新しくなっています。
この新パスポート、実は見開き面のデザインに葛飾北斎の「冨嶽三十六景」が採用されていることを御存じでしょうか。
直ぐに海外旅行の予定が無くても手に入れたくなるようなセンスのよいパスポートです。
新パスポートの表紙(カバー)についてはこれまでと同様の意匠なのですが、内部の査証欄(白いページ)については見開きごとに冨嶽三十六景の各作品が描かれたデザインとなっています。
査証欄の大幅なデザイン変更は1992年以来で、実に28年ぶりの刷新になるとのことです。
最初はオリンピック記念だった!?
日本のパスポートの仕様やデザインは一定ではなく、実は5〜7年毎に定期的に変更されています。
当初新パスポートについては2020年に開催予定だった「東京オリンピック、パラリンピック」を記念してデザインが変更される計画でした。
その後オリンピック、パラリンピックの延期という事態が起こり、記念という位置づけは薄まって単に仕様を変更するという形になりました。
新デザインは富嶽三十六景
新パスポートの仕様は領事局長主催の次期旅券冊子デザイン選定準備会で選定され、2016年5月18日に基本デザインが選定されました。
選定準備会合では「日本的なデザイン」をコンセプトに幾つかの候補案からデザインが検討され、作品が世界的に知られていることに加えて日本の象徴的存在でもある富士山をメインモチーフとしていることや、日本を代表する浮世絵であることなどを理由として葛飾北斎の「冨嶽三十六景」を基本デザインに採用することが決まりました。
そこから発行まで実に4年近く掛かっていることになります。
選定準備会の会合メンバーは以下の有識者5名で、最終的には外務大臣が決定した形となっています。
マラソン選手や俳優が決めていたんですね。
高島肇久代表(㈱海外通信・放送・郵便事業支援機構会長)
有森裕子さん(元マラソン選手)
荻野アンナさん(慶應義塾大学文学部教授)
関口知宏さん(俳優・旅人)
中林忠良さん(東京芸術大学名誉教授)
葛飾北斎
日本のパスポートのデザインに採用された「冨嶽三十六景」は浮世絵師・葛飾北斎(かつしかほくさい)の代表作といえる浮世絵シリーズです。
富士山をメインモチーフにした浮世絵の作品郡で、三十六景といいながら実際には46図に及ぶシリーズになっています。
葛飾北斎は江戸後期の天才的な絵師で、その斬新な構図・画風・作品はゴッホやモネなどヨーロッパの画家達にも多大な影響を与えました。
北斎の作品は海外で極めて高い知名度を誇っており、日本を代表するデザインとしては申し分ありません。
見開きが浮世絵!?
2020年に更新された新パスポート(2020年旅券)は、偽造防止能力を高めるために「冨嶽三十六景」をデザインに取り入れていた他にも、IC内の個人情報の不正読取りなどを防ぐ機能を強化しています。
日本のパスポートには有効期限が10年の「10年旅券」と有効期限が5年の「5年旅券」とがあります。
10年旅券は表紙を除くと54ページあるのですが、その内査証欄等の48ページに「冨嶽三十六景」図柄24作品を使用しています。
見開き2ページで一作品、24作品で48ページです。
5年旅券では32ページに16作品を使用しています。
北斎パスポート保有者が増えています
2020年2月4日から新仕様の旅券(パスポート)の申請が受け付けられています。
当初は新型コロナ問題の影響でパスポートを申請している人が少なく、新パスポートはまだまだ目にする機会が少なかったですが、海外渡航が本格化して行くとともに更新も含めて新パスポートを持つ人が増えてくることになります。
まとめ
パスポート(旅券)は海外に行く時には欠かせない、自分の分身のような存在です。
海外ではパスポートを見てどんな人間かを判断されることさえあります。
そんな大切なものならば、偽造されないことも大事ですが、外国の人が見てもクールでかつ日本人のアイデンティティを示せるものであった方が嬉しいですよね。
現在のパスポートはそうした要望に応えた魅力溢れるものになりました。
更新の近い方、パスポートの無い方は最新のパスポートを手に入れてみてはいかがでしょうか。
旅行に行きたい気持ちも強まるかも知れませんよ。
今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。
コメント
こんにちは。パスポートに冨嶽三十六景いいですね。パスポートの更新が楽しみになりました。
メッセージありがとうございます。私も新しいパスポートが早く欲しいのですが期限がまだまだ来ません。持っている人が羨ましいですね。